めまい

1. 現代医学から見た「めまい」

めまいは、傍から見ると大した病気には見えないものです。
しかし、天井が回って立ってトイレにも行くことも出来ないケースや、自動車の運転中のめまい発作など、苦しいだけでなく、大変危険な病気とも言えます。
日ごろ何気なく享受している健康のありがたさが、失ってみて初めてしみじみと感じられるケースの一つと言えます。

めまいの原因について、現代医学では、以下のような分類をしています。

・良性発作性頭位めまい症
・メニエール病
・高血圧
・低血圧
・脳性貧血
・前庭神経炎
・脳腫瘍
・外リンパろう
・薬剤障害
・原因不明・・など

また、脳梗塞や、くも膜下出血でもめまいが出ます。これらは即、命にも関わるものですから、急激なめまい、特に頭痛を伴う場合には、至急に脳の専門医の診断を仰ぐ必要があります。

さらに「メニエール病」の場合でも、放置すれば、高度な聴覚障害へと進展する可能性がありますので、専門医のもとでで正しい診断を受けておくことが大切です。

原因不明とされるケースも少なからずありますが、そのような場合でも、「糖尿病」などの基礎疾患がないか?あればそれらの治療を着実に行う事が基本です。

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2. 漢方における「めまい」の解釈

一方、漢方医学には、西洋医学とはかなり異なった、人体や生命活動を解釈する枠組みがあります。
漢方は、この枠組みを使い、西洋医学とは異なった方向から、めまいに立ち向かっています。

基本的な事ですが、漢方医学は、病気や症状について、「気」の巡りの異常を考えます。
めまいについても、上焦(胸から上)での「気」の巡りの異常に注目します。
ひとつには、過剰であること。一方で、逆に不足しているケースが挙げられます。


「気逆」(きぎゃく)

ここでは、過剰であるケースについて考えます。

人体においては、頭部から下がって来た「気の流れ」は、上焦(胸部)における「肺」(はい)と中焦(上腹部)における「脾」(ひ)によって、更に下へと下がっていきます。
しかし、この「肺」と「脾」の働きが弱く、気を下降させることが出来ない、あるいは「肝」の「気を昇らせる作用」(「昇発」)が強すぎると、一転、逆上して再度昇っていきます。
これを「気逆」とか「逆上」(ぎゃくじょう)といいます。

現代医学で「メニエール病」とされる症状では、めまいと一緒に、吐き気も生じる事が多いものです。
漢方ではこれを「気逆」ととらえる事により、それらの発症のメカニズムを整然と説明する事が可能です。

---めまいの発症
「気」が逆上すると、頭部に「気」が充満し、熱を帯びます。
一方で、「脾」「肺」の働きが落ちていると、体内の「水」を適切に捌くことが出来なくなり、不用な「水」( = 飲)が体内に停滞します。これが、上昇する「気」によって上焦に滞留します。

このため、頭部に熱と、熱によって凝集した飲( = 痰」)が停滞します。
この痰によって「気血」の正常な運行が阻害され、動揺、間歇的な症状が発生します。( = 風気内動)
これが、西洋医学でいうメニエール病に相当すると言えます。

---吐き気
漢方では、脾胃の気を下降させる力が弱いということは、食べた食物を下降できないことも意味します。このため、食物は、いつまでも胃内にとどまり、場合によっては胃内容物の逆流が生じるのです。つまり「嘔吐」あるいは「吐き気」となります。

この「気逆」(きぎゃく)から生じる現象は、他にもあります。例えば

不眠症
頭痛
目の充血
のどが詰まった感じ(よく咳払いをする)
食欲不振
動悸

などがあります。
同じめまいであっても、西洋医学でいう「メニエール病」といえば、内耳の病気ですが、漢方でいう「気逆」は、めまいとそれに伴う吐き気、またその他の症状の発生が、統一的に説明されています。
めまいがあり、メニエール病と診断されている方で、上記のような症状も併せもっている人は、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
当薬局での経験では、メニエール病様の症状の方で、逆流性食道炎や、不整脈など、気逆に関係する病症を併せて診断されている方が少なからずいらっしゃいます。

このようなケースでは「気逆」の原因を適切に考察して、それを地道に改善させていく事。それがめまいの改善にもつながっていくようです。
多くの場合、特に「肝」や「脾胃」、が直接的に関係していますが、それらを支えている「腎」も、もちろん関係があります。
・「肝」について言えば、怒りや不満を押さえつけている事による「肝気鬱結」(かんきうっけつ)
・「脾胃」について言えば、冷たい食事、暴飲暴食による「脾胃気虚」(ひいききょ)
・「腎」について言えば、「脾胃気虚」から派生した「腎陰虚」が、「肝陰虚」(かんいんきょ)に及んだケース
などです。

平易に言い直しますと、仕事などでの過剰なストレス、食事で冷たいものや、脂っこいもの、辛いものの摂りすぎ、また、姿勢や呼吸の悪い習慣が関係しています。
西洋医学でも、メニエール病の悪化要因に「精神的ストレス」が挙げられています。このことは、漢方医学における「めまい」発生の理論を補強するものと言えるでしょう。

「気血両虚」(きけつりょうきょ)

一方、上記のような「気逆」がない方でもめまいが発生することは往々にしてあります。
ここでは、「気」が不足しているケースを見ます。
顔に赤みもなく、精神的にも沈んだ感じの方が多く、「気逆」とは別の原因でめまいが起きています。
「立ちくらみ」といった表現で相談にいらっしゃるケースです。

この場合、全身的に「気」が不足しており、頭部への気のめぐりも充分ではない場合が多いようです。また、「気」の不足のため「血」も不足し、「気血両虚」(きけつりょうきょ)の状態になっています。色白なタイプになります。

また、気や血が不足している結果、「肺」や「脾胃」の機能が落ちて、水の代謝がわるくなり、いわゆる「ぷよぷよ」な肌の方も多いのです。「色白、ぽっちゃり」です。
このような方は、「気」を充実させるよう、少々時間をかけて体質改善する必要がありますが、めまいがひどい場合には、当座の対応として、「腎陽」を補う漢方薬(助陽薬)を用います。

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3. 体質改善を待っていられない場合

漢方でも、ひどいめまいに当座対処するのには、水の代謝を良くする(内耳リンパのむくみを改善させる)手法を採ります。この点は、西洋医学と共通すると言えます。
しかし、長い目で見た根治や、再発予防となると、上記の「気逆」や、「気血両虚」の体質を改善する、抜本的な対策を採ることが大切と言えるでしょう。

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